初代 川瀬順輔 師の考え

初代・川瀬順輔師の考えが解説されている「釈義」をご紹介します。
原文は竹友社発行楽譜「一二三鉢返調・瀧落之曲」の裏表紙に掲載されています。
現代漢字当及び読みは全国竹友会・新潟支部の乙川清峰師にお願いしました。

(釈義)

由来本曲は普化禅(ふけぜん)に発芽(はつが)せる修法の楽なり。
然(しか)るに時代の推移は遂に之れをして娯楽の楽に伍さしむるに至る。それがため尺八禅の崇高なる風韻は漸次に喪失せるものの如し。之れを楽の本質より正せば本曲の仮死とも言うべし。
而(しこお)してその形骸とも見るべき楽譜は存すと言えども、その生命たる楽想は全然娯楽のそれに近似(きんじ)のものとはなりぬ。
かくのごときを修禅としての古典に還すは広く行われ難き事なり。故を以ってその撰ばれたる一部幽玄(ゆうげん)の道士に委(ゆだ)ね、一般的には過去そのまま時流に従うの利に如(し)かざるものと考えてる。
幸にして外曲に伴い技術の進歩したる今日、この譜の形骸を礎(いしずえ)とし外曲の華麗を材とし、先人の遺鉢(いはつ)を規範として、新たに我尺八独特の思想楽を創建する事が、目下に迫れる使命のひとつなりと信ず。編者この業(わざ)の意を尽くし、亦茲(またここ)に存せり。
古来楽譜の不備はその伝承を区々にし、その正否を弁別(べんべつ)するに難(むず)からしめたり。今更その正統は捕捉し能(あた)はざるが故に、可成(かなり)師伝(しでん)に重きを措(お)き楽法上止むなき箇所には修正を加うる事とはなせり。